
お店でモノを買う場合、あなただったら、前と後ろのどちらに並べてある品物を手に取るだろうか?こう聞いてみたくなるのも、食料品の場合、新しいものほどいいという共通認識があるからだ。ス−パーなどでも、製造年月日や消費期限を見比べながら、品物を選んでいる人をよく見かける。誰だって、新しいほうを買いたいと思うだろうから、無理芯ない。古いほうがいいのはワインくらいかもしれない。ところが、売る側としては古いものも売れてくれなければ困る。そこで店員の悩みのタネとなるのが、品物が入荷されてきたときに、新しいものと古いもののどちらを最前列の手にとりやすいところに並べたらいいか、である。新しいものが前にあれば、それから売れていく。しかし、それだと、古いものは永遠に売れず、いつしか消費期限を過ぎてしまう。したがって面倒でも、新しいものが入荷したら、いったん棚にある在庫を出して、新しいものを奥に入れ、それから古いものをその前に並べたほうが、店としてはロスは少ないわけである。某ハンバーガーチェーンの店員マニュアルによれば、工場からパンなどの材料が届いたら、面倒だが、古いものを前に出し新しいものを奥に入れること、とある。そうして、前にある材料から使っていくのである。新しいものを前に入れてしまうと、古いものが使われないまま悪くなってしまうからだ。しかし、これは客が直接選ぶ商品ではないからできることと言えるだろう。客が直接に商品を手にとるような場合は、そうもいかない。一部の店では、客の評判を落とさないように「後入れ先出し」を指導しているという。ある店の場合、弁当やパンなどは1日に3便届く。そのたびに、新しく来たものを最前列に並べるようにしているのだ。場合によっては、ロスが出るが、それよりも客の信用を、という考えだという。価格の高い衣料品もまた、やはりきれいなものを最前列に置いておかないと、店全体のイメージが悪くなる。ブティックなどでは、常にきれいな新品を最前列に置いているはず。書店の場合、事情はもう少し複雑になる。本の場合、消費期限なんてないから、基本的には、同じタイトルの本ならどれを買っても中身は同じ。となれば、外見がきれいなものがいい、と思うのが人情である。売れ筋のベストセラーは、平台に積んであることが多いが、ほとんどの人が、まずいちばん上のものを手にとって、パラパラと眺めたあと、いざ買おうと決めると、その本ではなく、その下にあるきれいなものを手にしてレジに向かう。こうして、いちばん上の本は、何人もの人の手にはふれるが、レジまで持っていかれることはない。そこで、あんまり何人もの人が手にとると汚れてくるので、店側は、ときどきその上にさらに本を補充して、いちばん上の本が常に入れ替わるようにしているはずだ。あなたが誰もさわったことのない本だと思っていても、実はそうではないのである。表紙のカバーはきれいでも、上にホコリがたまっていたりするものは、長く棚にさらされていた本だろう。潔癖症の人は、下のほ今や、背表紙の反対側の小口と呼ばれるところの汚れにも気をつけたほうがいい。ちなみに、本の最後のほうにある奥付の日付は、実際の発売日とはズレていることが多い。だいたい実際に印刷・製本が終わり、できあがる日の半月ほど先の日付となっている。新刊だと、手にした日よりも「未来」の日に発行されていることが多い。食品の製造日には、皆厳しいけれど、本の場合、くさるわけでもないので、けっこういいかげんでも許されているようだ。